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みんなで考えよう!高次脳機能障害者の就労~ご本人の立場から~

datetime2021年2月8日

令和3年2月5日(金)14:00~16:00

『みんなで考えよう!高次脳機能障害者の就労』を開催いたしました。

宇和島保健所様のご協力で、令和2年度高次脳機能障害支援関係者研修会も兼ねての開催となりました。

今回は初のオンライン研修です。

ZOOMにて、西予会場、宇和島会場、そしてお勤めされている職場からなど、県内外91名の方がつながり、学びあうことができました。

昨年度は医療から就労へ、チーム支援について疑似カンファレンス形式を用いて学びを深めましたが、

今年度は当事者の立場からということで、愛媛高次脳機能障がい者を支援する会「あい」の髙瀬峰文さんよりお話しいただきました。

髙瀬さんは理学療法士として患者様のリハビリに現在関わっておられ、

就労支援とは何か?社会復帰とは何か?もう一度、発症前の私に戻れるか?についてお話しいただきました。

発症前から発症後、そして復職を果たされた現在まで順を追って、様々な視点からお話しいただき、

あなたの目の前にいる人が、友人なら?家族なら?向き合い、考えることで問題の本質がみえるのではないか?と言葉を投げかけていただきました。

参加いただいた方からは、「ご本人が感じている違和感や葛藤にしっかり寄り添いたい。」「当事者の方々が感じている見えない夢や想い、現実を共有しながら支えていきたい」などの感想が研修後に寄せられました。

 

    

松山リハビリテーション病院の伊賀上 舞さんからは、県内の支援体制について、

松山リハビリテーション病院での復職支援について、

トピックスとして、運転再開に向けての支援についてお話しいただきました。

車の運転に関しては、愛媛県で生活、また働く上でとても重要です。

皆さん関心をもって聞かれておりました。

   

質疑応答では、事前質問やチャットで受けた質問に、一つずつ、丁寧にお二人にお応えいただきました。

お忙しい中、オンライン研修に講師としてご参加頂いた髙瀬さん、伊賀上さん、お二人に心より感謝申し上げます。

また、ご参加いただいた皆様もありがとうございました。

今回の研修を陰ながらサポートいただいた、ぶうしてむの皆さま、ありがとうございます。

※研修中にご回答できなかったご質問について現時点でのご回答をいただいております。

 

「みんなで考えよう!高次脳機能障害者の就労」~ご本人の立場から~ 2021.2.5(金)開催

事前質問についての回答                    2021.2.25現在回答

  • 地域事例について→保健所で定期的に事例検討会を行っています。是非!(伊賀上)

 

  • 該当者が自身で財産管理をしていけれるのか?

→私の場合、最初はiPhoneからネットバンクにアクセスでき、いらない物を買ったり、馬券を買ったりとしていたようで、術後数日間はiPhoneを家族に没収されていました。

その後は以前と同様自己管理はできていますが、管理できておらず浪費してしまう当事者の方も多くいらっしゃるようです。その場合は家族(特に親御さんや配偶者)がされているようです。成年後見制度については、勉強不足でよくわかりません。(高瀬)

 

→財産管理が可能か否かはご本人の能力(客観的な評価)はもちろん、家族背景や生活状況を踏まえて個々に相談しています。管理しないといけない財産の程度にもよりますが、当院ではこれまで成年後見制度の利用に向けて支援した方が複数名おられます。(伊賀上)

 

  • 受け取り方でトラブルになった時の対応、受け取り方でトラブルにならないための工夫や注意点

 

→研修の際にもお話をしましたが、当事者がうまく受け取れないと、その後のリハビリには繋がりにくいと思います。家族様など、当事者以外の方とも同様に説明し、納得いただくことが工夫ではないかと思います。(高瀬)

 

→記憶の代わりに記録(書面や写真、ボイスレコーダー等)を残す、といことがトラブル回避の大原則かと思います。この記録もどちらかの一方的なものではなく、ご本人との確認とすり合わせをしながら行っています。またどの方法がよいかについてはリハビリスタッフが専門のため、退院後に引き継ぐ場合には入院先の病院スタッフから情報収集して頂くのがよいと思います。(伊賀上)

 

  • 本人の目指す目標と家族が目指す目標と違った場合どのように両者のすり合わせをしながら支援していけばよいか? 

→本人と家族の目標に差がある場合に関しては、きちんとした評価結果があれば説明もしやすいかと思います。私の研修内容でもお話ししましたが、「本人がどのくらいの状態を把握出来ているか」は非常に大きいと思います。意思疎通が可能な患者様でしたら、まずは対話から始めてみてはいかがでしょうか?(髙瀬)

→具体的な状況(どちらの目標の方が高いのか等)が分かりかねますが、すり合わせには時間を要しますし、ご本人とご家族、それぞれに対して支援が必要になることも多いかと思います。ご家族がご本人の一番の支援者になれるようにご相談をしています。(伊賀上)

 

  • 高次脳機能障害のある方が発症前に就いていた仕事以外は就きたくないという意思が強い場合(ただ実際は元の仕事をすることは難しい)どのように本人の意思を尊重しながら就労支援をしていけばいいか?

→研修の際にもお話をしましたが、まずは現職への復帰をトライし、「なぜできないのか」ということをはっきりさせることが、今後の就労支援に繋がると思います。(髙瀬)

 

  • 訪問看護の利用者で若年の方の就業先

→A型・B型があるという程度しか認識していません。すいません。ただその条件で、若い方が生活できるかどうかの不安はあります。(髙瀬)

→就労と言っても多種多様な働き方がありますよね。障害福祉サービスを利用した就労の形、障害者雇用枠、一般就労、職業訓練等々…ご本人のやりたいことは何かを確認しつつ、適正な能力評価等を行いながら支援しています。就労においても多職種(機関)連携がポイントかと思います。(伊賀上)

 

  • 本人の希望に沿った支援先で相談窓口がどこになるのかがわからないため教えてもらいたい(時間なども)

→どういった希望なのでしょうか??拠点機関、協力機関、保健所、就労に関する相談等によっても違ってくるかと思います。具体的なご相談であればまた別途ご連絡下さい。(伊賀上)

 

  • 一般就労に繋げるための効果的訓練などご教示いただければと存じます。

→研修でもお答えしましたとおりですが、私の場合は処理能力が低いことを問題にしていたため、計算問題や各種脳トレ等、反復し訓練をしてまいりました。(髙瀬)

 

  • 粗暴性ある高次脳機能障がい者の支援事業所があれば見学したいと思います。どこかありましたら教えてもらえますか。県外でも構いません。

→粗暴性のある方は社会生活を円滑に送るため、まずは環境調整ですが、それと共に薬剤等の調整が必要になることも多いです。特化した事業所ということではありませんが、社会的行動障害を有する方の集団トレーニングの実践が学会レベルでは報告されていました。また首都圏では精神科デイケア等でSSTを行っているところもあるようです。全国の状況等、確認してみます。社会的行動障害のマニュアル等も科研費で作成されているようなので、手に入ればお知らせします。 (伊賀上)

 

  • 易怒的で治療・介護拒否をする場合の対応

→私の場合は一通り怒ってるところを、家族が静観していました。時間がたてば落ち着いたようです。参考にならなくて申し訳ありません。(髙瀬)

→状況にもよりますが、社会的行動障害を有する方は環境調整でも困難な「生活」の不適応が出る場合には投薬治療について当院でも検討しています。精神機能を安定させるお薬でも、疾病教育をしっかり行ったうえで「怒りっぽくなっているから」と直接的に伝えることもありますし、「てんかん」や「不眠」等、その他の切り口でご本人へアプローチすることもあります。介護拒否も以前、高知大学の數井先生の講演では「入浴」を目的とするのではなく、「散歩」のついでに「お風呂」に促す等の取り組みもご紹介頂きました。当院でも何故嫌なのか、どうすると抵抗なく出来るのか等を多職種で検討、相談しながら支援を行っています。(伊賀上)

 

  • 病院のため集団での生活、集団でのOTとなります。その際興奮して易怒的になったりする場合も多くあります。説明すると納得はして静まりますが、しばらくすると周りの刺激でまた興奮状態となり、何回も繰り返します。何か良い対応はあるでしょうか?

→集団での療法中、その方が落ち着けるカームダウンのスペースは必要かと思います。落ち着くだけの時間は欲しいと思います。(髙瀬)

→グループでアプローチしていく場合、参加者の状態が大きく違うと双方にとって易刺激性が高まるといった報告を聞いたことがあります。個別リハ・ケアではいかがでしょうか?集団への適応が難しい場合はまだ個別アプローチの段階かもしれないと思います。(伊賀上)

 

  • 研修の中でもあるかもしれませんが、リハビリを終え社会復帰される時の他機関とのつなぎ、つながりはどのようにされているのでしょうか?

→私の経験では、退院後に病院との繋がりが消えたことで、不安が大きくあります。私の現在の繋がりとしては「家族会あい」くらいしかありません。(髙瀬)

→お話させて頂いたように、まずは現職復帰に向けて医療機関、福祉サービス担当者(機能向上や実績作りのため)、就労支援機関(職業センターや就ポツさん)と連携を取って定期的に検討しています。(伊賀上)

 

  • 訪問中に初めに話していた内容と全く違う内容をされることがある。

→「言った」「言っていない」の押し問答はまれにあるかと思いますが、その中にその方が本当に伝えたいことがあるかもしれません。私も最初はそうだったようです。(髙瀬)

→その方の高次脳機能の状況にもよりますが、内容を紙面に残す、写真を撮る、ボイスレコーダーで録音する等、方法を幾つか提案しています。(伊賀上)

 

  • ご本人が就労希望されてから実際に働くまでの道筋や思いの変化について学ばせていただきたい。

 →思いの変化については研修の通りです。最初に抱いていた良いイメージは、復帰後にどんどん崩れていきましたそのような壁はあると思いますので、その時にどのようにフォローできるかが重要かと思います。(髙瀬)

 

  • 障害を受け入れたうえでサービスを利用できるようになるまでの支援がなかなかうまくいかない。

 →まずはサービス利用が第一歩ですが、その先のビジョンについても説明していただけるとありがたいと思います。本人や家族ともども、先が見えない状態ですので。(髙瀬)

→本当に長期的な関わりが必要になることも多いと思います。大変だなと思うことがあれば、お話するだけでも是非ご連絡下さい!(伊賀上)

 

  • 退職し、本人も納得の上でB型から仕事を再開されるがモチベーション目指すところが定まらずにいる方に対し、本人とどう目標設定をしていくか?地域でどんな支援があればよいか教えていただきたいです。

→B型支援では様々な方が集まるため、イレギュラーな出来事もあると思います。その時の感情を吐き出す場所として、家族会といった集まりでのガス抜きがよい効果があるかと思います。目標設定については私も苦労していますが、①目先のこと②遠い未来(具体的には1年後など)をともに考えてみてはいかがでしょうか?(髙瀬)

→当院では一旦退職し、B型でリズム作りや耐性UPをはかっていく場合でも、長期的なゴールとそこまでのステップをお示しすることが多いです。まずはご本人の目指す目標(一般就職や障害者雇用)に向けての支援計画をご本人と一緒に検討します。その過程の中で疾病教育、障害受容に向けたアプローチを長期的に行いながら、最終的なゴールを修正していくことが多いです。本当に日々、地域の皆様のご支援があってのことと思います。遠回りに見える支援でも一緒に色々検討して頂けると嬉しいです。(伊賀上)

 

  • 記憶力の欠如に対して、どのような工夫をされてますか?

→記憶障害に対してですが、私は常にメモをとりました。メモ帳以外に、スマホのメモ帳アプリやリマインダーを活用しました。(髙瀬)